5G に向けた IoT 有無線モバイルフロントホールの光アクセスネットワーク PON のリソース管理制御自動化の実証実験に成功 総務省委託研究「IoT機器増大に対応した有無線最適制御型電波有効利用基盤技術の 研究開発」を推進
国立大学法人東京大学(総長:藤井 輝夫、大学院工学系研究科中尾研究室(教授:中尾 彰宏) /以下、東京大学)は、総務省の委託研究「IoT 機器増大に対応した有無線最適制御型電波有 効利用基盤技術の研究開発(JPJ000254)」の取組の一環として、沖電気工業株式会社(以下 「OKI」)及び三菱電機株式会社(以下「三菱電機」)と共同で、5G 無線アクセスネットワ ーク(Radio Access Network, 以下RAN)の多数の小型基地局収容をPONによる光アクセス ネットワークでフレキシブルかつ高効率に収容するための「PON リソース管理・割当制御技 術」を開発してきました。5G システムでは、IoT 機器多数同時接続や超低遅延、あるいは大 容量高細精度映像通信などの通信品質の異なるサービストラフィックを個別に扱うためネッ トワークスライシング技術が使われます。開発した PON システムは、ネットワークスライシ ングに対応した PON リソース管理制御を実現しており、実験では、サービス毎のトラフィッ ク・データをもとに機械学習にて需要予測し、通信リソースを自動で割当制御する技術を、 「PON リソース管理・割当制御技術」に適用し、スライス・リソース自動制御に成功しました。 本成果は、無線通信技術に関する国内最大級の専門イベント「ワイヤレス・テクノロジー・ パーク 2021」に出展されます。
開発および実証の内容:
東京大学・三菱電機・OKI は、仮想的な PON を構築するオーケストレータ(東京大学担 当)、光アクセスシステムを PON などのネットワーク形態に依存しない形態に抽象化して通 信リソースの管理制御を行う SDN コントローラー(SDNC)(※1)(三菱電機担当)、およ び PON リソースの割当制御を行う VOLTHA(※2)/vOLT(※ 3)形式の PON 仮想化 (OKI 担当)の研究開発を行ってきました。今回の実験では、5G の RAN における多数の基 地局の収容に PON を使用した光アクセスネットワークをモバイル・フロントホールとして使 用することを想定し、モバイル・フロントホールのネットワークリソース利用の高効率化を 実現するため、サービスごとの変動するトラフィック・データを収集し、収集データによる 機械学習からトラフィック需要予測情報を PON システムに提供することで、予測にしたがっ た無駄のない PON スライス・リソースの自動割当制御を実現しました。 実験では、サービスに対応して論理的に分離された仮想ネットワークのサービスごとの変動 トラフィックを、FLARE(※4)を使用した振舞いを監視ノードで収集・データベース化 し、収集データから各サービスのトラフィックの変動パターンをオフラインで機械学習した 後、リアルタイムのトラフィックデータからオンライン学習にてトラフィック需要予測しま す。サービススライスごとに予測した情報を SDN コントローラに提供することで、VOLTHA /vOLT のリソース管理が自動制御できることを実験実証しました。 今後は、機械学習を使った AI による Beyond5G のモバイルネットワークに向けた通信リソー ス運用管理の自動化に加え、ネットワークのトラフィック異常検知あるいは予測によるプロ アクティブ制御技術の開発に取り組みます。
用語説明
※1:SDN コントローラー(SDNC)
SDN(Software Defined Network)は、ネットワークをソフトウェア化する技術の総称で、そ の制御機能を SDN コントローラーという。
※2:VOLTHA(Virtual OLT Hardware Abstraction)
業界団体 Open Networking Foundation (ONF)が CORD(Central Office Re-architected as a Datacenter)プロジェクトの中で開発した OLT の機能を抽象化する装置であり、各ベンダ の異なる仕様の OLT 装置を共通化することで、制御を簡単化する。
※3:vOLT
Virtual OLT PON における集線装置を仮想制御する OKI 開発の装置。
※4:FLARE 東京大学開発のプログラマブル・ネットワーク装置。実験では、通信パケットに付加したタ グを目印にアプリケーション・レベルでのキメ細かいトラフィック・モニタ機能を実装。
※報道機関からのお問い合わせ先
国立大学法人東京大学 大学院工学系研究科 中尾研究室
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以上