東京大学、KDDI 総合研究所、Beyond 5G/6G 時代を見据えた 「未来スマート社会研究」社会連携講座を開設

国立大学法人東京大学大学院工学系研究科

株式会社 KDDI 総合研究所

2022 年 2 月 4 日

東京大学、KDDI 総合研究所、Beyond 5G/6G 時代を見据えた 「未来スマート社会研究」社会連携講座を開設

国立大学法人東京大学大学院工学系研究科(研究科長 染谷隆夫、以下東京大学)と 株式会社 KDDI 総合研究所(代表取締役所長 中村元、以下 KDDI 総合研究所)は、情報・ 通信・デバイスの技術が融合された、Beyond 5G/6G 時代におけるスマート社会基盤の 構築に関する研究開発を行う「未来スマート社会研究」社会連携講座(以下、本社会連 携講座)を 2022 年1月1日から開設し、共同研究を開始しました。

本社会連携講座は、Beyond 5G/6G 時代におけるサイバーフィジカルシステムを見据え、 情報・通信・デバイスといった様々な分野を横断した研究開発を行うことで、社会全体 にまたがるインフラの構築、データ収集・流通・解析までアーキテクチャ全体を見渡せ る技術力を持つ人材の育成、新産業創出・社会イノベーションを起こすための産学連携・ 交流を目的としています。

本社会連携講座において東京大学は、Backscatter 通信(注 1)やエナジーハーベス トデバイス(注2)など、無線・デバイス関連や、AI などのデータ解析に関する研究開 発を主導的に行うとともに、コンテスト開催など実践的教育による人材育成を行います。

DDI 総合研究所は、データハブ/MEC(Multi-access Edge Computing)技術関連のデ ータ流通や全体アーキテクチャに関する研究開発を主導的に行うとともに、本社会連携 講座の成果の社会実装や標準化を目指します。

<本社会連携講座の概要>

講座名称: 未来スマート社会研究 研究題目:スマート社会基盤構築のための情報・通信・デバイスを横断した研究 研究内容: ・フィジカル空間からサイバー空間にデータを収集するための、デバイスやネットワー クに対するメンテナンスフリーを実現するための技術 ・膨大な数のセンシングデバイスから収集したデータを効率よく、保持・流通するため のネットワーク技術
・サイバー空間での AI 等を用いたデータ解析を見越した、データの収集・処理技術 ・AI などを活用してネットワークの運用を容易にする運用自動化技術

代表教員:中尾彰宏(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻 教授) 設置期間:2022 年 1 月 1 日から 2025 年 3 月 31 日まで
(参考)東京大学の社会連携講座とは、公共性の高い共通の課題について、東京大学と 連携して研究を実施しようとする民間等の外部機関から受け入れる経費等を活用して 設置される講座のことです。
https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/research/orgs-projects/d04_07.html


KDDI と KDDI 総合研究所は、経済発展と社会的課題の解決を両立する持続可能な生 活者中心の社会「Society 5.0」の実現を加速する、2030 年を見据えた次世代社会構 想「KDDI Accelerate 5.0」(https://www.kddi-research.jp/kddi_accelerate5_0/) を策定しました。両社は、ネットワーク、プラットフォーム、ビジネスの 3 レイヤの 環境整備を進めると共に、3 つのレイヤを支える先端技術となる7つの分野のテクノ ロジーと、それらが密接に連携するオーケストレーション技術の研究開発を推進しま す。
今回の取り組みは 7 分野のテクノロジーの中の「ネットワーク」「IoT」に該当しま
す。

<共同研究の詳細>
Society 5.0 を支えるサイバーフィジカルシステムにおいては、フィジカル空間を測 定し、そのデータをサイバー空間で流通・解析します。この測定を担うのがセンシング デバイスを含む IoT デバイスとなります。B5G/6G 時代においては、現在 5G を用いて接 続されているデバイスだけでなく、環境センサやウェラブルセンサなど多くの IoT デバ イスがネットワークに接続され、広範囲にフィジカル空間を測定することが予想されま す(図 1)。これらの IoT デバイスは低メンテナンスコスト、究極的には一度設置すれ ば数年間測定を続けるメンテナンスフリーが求められます。このためには消費電力が小 さい Backscatter などのパッシブ型の無線通信技術、環境エネルギーを用いて発電する エナジーハーベスト技術、ならびに AI などを活用することでネットワークの運用を容 易にする運用自動化技術が必要となってきます。
IoT デバイスは膨大な数となるため、それらが収集したデータを効率的に収集・解析 する基盤が必要となります。すべてのデータを 1 つのデータセンタに収集することは、 そのデータ量を鑑みると効率が良いとは言えず、MEC などネットワーク内の計算資源を 用いた処理やデータの保持が効果的です。これは、データハブやデータドリブンネット ワークと呼ばれる、ネットワーク上でデータ流通をサポートする新しい基盤となります。
さらに、これらの技術は1つ1つ個別に検討すべきではなく、全体をアーキテクチャ として考える必要があります。例えば、サイバー空間における AI を用いたデータ解析において、丸め込まれたデータは、最初から精度を落として測定することで、IoT デバ イスの消費電力やそのデータを収集するための通信路のリソースを削減できます。また、 MEC で AI での解析を想定したデータ加工を行うことで、負荷分散や通信・ストレージ コストの削減が期待できます。

図1に本社会連携講座が想定する B5G/6G 時代のネットワークを示します。この中で、 現在の 5G ネットワークでは対応が難しいウェアラブルセンサや環境センサのデータ収 集技術、さらにそれらを含め収集されたデータを MEC などネットワーク内の処理基盤や ストレージを活用したデータ流通・解析基盤技術が、本社会連携講座の検討範囲となり ます。
本社会連携講座は、横断的アプローチで社会全体に跨る社会インフラの構築と共に、 情報・通信・デバイスといった様々な分野を横断した研究開発ができる人材の育成を目 指します。

注1:Backscatter 通信:自ら電波を発射するのではなく、環境に存在する TV や Wi-Fi などの電波をアンテナで反射/吸収することで電波を ON/OFF するように変調をかけて データを伝送する通信手法。とても小さい電力消費でデータの送信が可能という利点が あります。 注2:エナジーハーベストデバイス:身の回りにあるわずかなエネルギーを活用して発 電された電力で動作するデバイス。電池やバッテリへの充電が不要で動作可能という利 点があります。

<問い合わせ先>
東京大学大学院工学系研究科 広報室
株式会社 KDDI 総合研究所 営業・広報部

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